1/6 gravity on the moon| 2020
Type :design project/research driven design/ architecture/ visualization
Member :Yusuke Takahashi(designer) / Masato Ashida(Director) / Frontier Business Research Group(Researcher)
AWARD&EXHIBITION : 宇宙開発の未来共創2019(住友不動産六本木グランドタワー)
ここ最近、月面建築のプロジェクトが増えてきている。その背景にはNASAやSpaceXといった組織による月面開発の加速があるだろう。月面を開発する際には、地上同様やはりシェルターや居住スペースといった広義の建築物が必要になってくる。そこに切り込むべくコンストラクション方法やマテリアルなど色々な視点から月面建築プロジェクトが進められている。しかし、それら多くのプロジェクトに若干の違和感を覚えることがある。例えば、月面空間が描かれる際に地球上と同じような家具が設置されていたり、地球と同じようなスケールで建築物がつくられているのである。月面という地球上と大きく異なる環境を前提としたデザインでなければ、そのデザインは根本から成立しなくなってしまうということもありうる。では、月面の環境下では地球上における建築とどのような相違点が生まれるのだろうか。本プロジェクトは月面環境下で空間がどのようになりうるかという思考実験を一部ビジュアル化し、月面開発に新しい視点を投げかけることを目的としたプロジェクトである。
『地上の階段と月の階段の違いは?』この問いから始めることで、私たちは宇宙開発における新しい視点を獲得しようと試みた。中心的なテーマは月の環境的な特性。例えば、重力。目には見えないが私たち自身、そして身の回りに多大な影響を及ぼしている重力が1/6になったときに階段は、そしてその他多くのものはどう変わるのだろうか?
重力が1/6になると重さが1/6になる。そのような環境下では私たちの跳躍力は約6倍になるし、落下速度はおよそ1/6になる。摩擦も1/6近くになるはずなので地上よりも滑りやすいはずである。また、月面には大気がほとんどないため昼夜の気温 差が200 度以上ある。昼は100 度を越え、夜には-173 度になるため人間にとっては 過酷な環境である。また昼夜の概念も地球 と大きくことなっている。月の1日(太陽 が昇ってから沈むまで)はおよそ28日あり、そのため昼が14 日、夜が14 日連続するこ とになる。そして、放射線も非常に多く降 り注ぐため基本的に人間は月面上に長時間 滞在することは難しいとされている。このような環境下では当然地上と同じような建築が成立することはないだろう。このような環境における建築のデザインはどう変化するのだろうか。その疑問こそがこのプロジェクトのきっかけである。